夜中の訪問者

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夜中の訪問者

アリスは眠れず、ベッドから飛び起きた。そのときだ。窓に石があたった。 「?」 アリスは満月の夜、あまり外にでない。 あの日がもう一度来てしまいそうで、恐ろしかった。 自分は悪くないのに、本当は奴が怯えなければならないのに、何故か自分が怯えているのにも腹がたっていた。 もう一度石が当たった。 「もう…何よ!!」 思い切って窓から身を乗り出すと、友達のサキがいた。 「ねぇアリス!!ちょっと散歩しない?」 わがままなサキは、他人の事を全く大切にしなかったが、本当に大切な人の事は自分の宝物のように大切にした。 「サキ!!あなた今何時だと思ってるの!?」 「とか言って着替えて下まで下りてきてるじゃない」 「…いつになっても口がうまいねサキ。分かった。ちょっとだけならいいわ。」 フフンと勝ち誇ったように笑むと、アリスの手を強引に引っ張った。 サキの後ろ姿を見つめる。彼女を見るたび、いつも思う。 サキは美人だ。 短いストレートの黒髪に黒い瞳の切れ目。スラリと身長が高くて、いつも冷静沈着。肩の出た黒いシャツと細く長い足に似合うスキニー。 自分と同い年とは思えないほど大人っぽかった。 (それにひきかえ、私…) そう思いながら、最近少し太ったお腹に手を伸ばす。触れると、太ったのがさらに分かる。 (私もサキみたいに綺麗になりたいな。) もう一度サキを見つめる。すると、視線に気付いたのかアリスの方に振り向いた。 「ん?」 優しく微笑んだサキから、急いで紅潮した顔をそらす。照れ隠しに行き先を尋ねてみた。 「これからどこ行くの?」 「うちのおばあちゃん家。私最近眠れないのって言ったら、ケーキを作ってやるから夜中に来なさいって。しかも林檎の甘酸っぱいケーキよ」 (林檎…) 一瞬、握ったアリスの手が、強く握りしめかえしてきたのをサキは見逃さなかった。 「林檎…嫌い?」 アリスはハッとした。 「い、いえ、好きよ!!早く食べたいの、早く行きましょ!!」 アリスはサキの手を強く引っ張り走った。そのときだった。茂みから小さな光が二つ、怪しく瞬いたのは。  
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