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ぬいぐるみ
「着いたわ」
サキはノックせず、静かに入った。
・・・
「・・・ねぇ、泥棒と間違われないかなぁ」
「大丈夫だよ」
そして、あの日と同じように、寝室を開けた。アリスは怖かった。同じ事が起きてしまいそうだったから。
「おばあちゃん?」
アリスはサキのシャツの裾を強く掴み、ギュッと目を閉じた。サキは黙り込んだ。
「・・・サキ?」
アリスは恐る恐る目を開ける。アリスの瞳に映ったサキは、真っ青だった。
「あんたたち・・・何してるのよ・・・!!」
サキの見つめる先にはあの豚がいた。そして、ぐったりとしたサキの祖母がいた。それの顔を大きな豚が叩いていた。そして近くに転がったかじりかけの青林檎。
「い、いや、僕たちは」
「よ、よくも・・・ただじゃおかない・・・!!殺してやるわ、殺してやる!!」
「だめだよサキ!!サキ!!」
「ああああっ!!」
アリスは必死にサキを抑えた。そのときだった。豚のうしろから、暗闇にまぎれて何かが潜んでいた。
「めんどくさい・・・手際よくしないからだ・・・」
そうつぶやくと、細いタクトのような金の棒を振った。すると、暴れていたサキは、たちまち動かなくなった。
「お、おい、今のうちに逃げるぞ!!」
「アリス!!ぼ、僕らはやってないぞ!!またオオカミさ!!」
それだけ言い残し、三匹は逃げ去っていった。サキは瞬きさえしない。
「気に食わない娘・・・私の目に永遠にその顔が映らぬよう、目も口も聞けないただの人形にしてやろう」
そういうと、金の棒を振った。するとたちまち、サキにそっくりのぬいぐるみになった。
「サキ!!」
サキのぬいぐるみを抱きしめ、暗闇をキッと睨んだが、もうその姿は無かった。
「サキ、おばあさん!!」
アリスはこれ以上、大切な人が灰になっていくのを見たくなかった。
満月は今日も永遠にさえ感じる長い夜を照らし続ける。
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