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童話の常識
「煙、少ししか出ないな」
今日は、サキの祖母の葬式だった。アリスは、自分の部屋からその煙を見ていた。サキの母親も父親も大泣きだった。サキも見てくれているだろうか。アリスの腕の中で。
「私が敵をとる。私が敵討ちしなければいけないんだわ。」
アリスは泣かなかった。泣くと弱気になる。泣くのは、オオカミを倒してから。それまで、絶対に泣くものか。
そのチャンスは突然現れた。
アリスは、森の奥の湖に出かけた。これはおびき出すための罠である。もちろん、可愛いスカートの下には祖父からくすねたピストルが隠されている。
ガサッ
「!!」
アリスはスカートの下に手を伸ばした。
「おい」
(来た!!)
声をかけられた瞬間、銃口を後ろに向けた。後ろの者は、希望どうりのオオカミだった。正直狼狽した。シルバーの目。気高いたてがみ。鋭い牙を見たとき、震え上がり、叫んで逃げたかった。
「あんたね!!私と、サキのおばあ様を殺したのは!!」
「君は騙されてる」
「よくも言えるわねそんな事!!何もしていないのに・・・老婆ばかり狙って!!許せないっ・・・!!」
もう片方に入っていたピストルを取り出し、銃口を向けた。
「お嬢ちゃん、そろそろ静かにした方がいいですぜ」
「静かにしろですって・・・!?よ、よくもっ!!」
アリスは怒りで恐怖をかき消し、両方の引き金を引いた。と同時に、オオカミもアリスに向かって飛びついてきた。一つの弾は外れたが、もう一つはオオカミの耳をかすめた。オオカミはお腹めがけて真っ直ぐに飛び付いてきた。
(私は死ぬんだ。サキ、ごめんね。あなたを人間に戻せてあげる事はできなかった・・・)
アリスのお腹に走った鈍い痛み。そしてスカートの端が噛みちぎられ、湖の上を高く高く飛ばされた感覚・・・。
ドサッ
「・・・ん?」
アリスは、よく見るとオオカミも自分にタックルした格好で一緒に飛び越えた事に気付いた。食べられてもいない。スカートの端は噛みちぎられているが。
「よく見なよ・・・湖」
アリスは言われて、湖を見た。そこには、大きなワニがアリスのスカートの裾を口惜しそうに食べていた。
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