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オオカミと私と
「オオカミさんの名前、何ていうの?」
「僕はオオカミさんなんて歳じゃないよ。僕はパコっていうんだ。僕は君の事よく知ってるんだぜ。」
アリスは少し固まった。
「ストーカー?」
「いやいや違うよ・・・僕は仲の良かった人間のお姉さんが殺された。」
「・・・え?」
オオカミはアリスを見つめた。なかなか迫力のある目だ。
「君のおばあちゃんは毒殺されたんだろ?僕もさ。犯人は美しい女性ばかり狙っている。僕はやつを追っている。」
「だから私を?」
オオカミはコクリと頷いた。
「本当の犯人は分からない。しかし、そいつの手下は知っているぜ。」
「もしかして・・・」
「そう。豚だよ」
アリスは息を飲んだ。
「嘘・・・」
「僕はずっとやつらを追いかけてる。だから、君の事知ってるんだ。それに君のとこに現れるんじゃないかって睨んでたからつけていたんだよ。」
「でも私なんかのとこに現れるかしら・・・」
「君みたいな可愛い娘は、すぐに殺されてしまうんだ!!」
オオカミがそう叫ぶと、アリスの顔はみるみるうちに紅潮し、オオカミから目を逸らした。それを見てオオカミも、顔を真っ赤に染めた。ひとときの沈黙が続く。
「まぁ、その、そういえば、アリスは屋上から落ちたとか」
沈黙を破ったのはオオカミだった。
「え、ええ。落ちたわ。」
「落ちた場所は木だったかい?その木は大きかったかい?」
「そうよ。大きな木の根本に私うずくまってたそうだから」
「やっぱり・・・」
オオカミは俯いた。
「あの木はね、動物が喋ったり魔法が使えたりする世界と、君がもともと暮らしていた、科学っていうものが発達していた世界を結ぶものなんだ。どっちの世界にも同じ景色、人があるんだ。」
「つまり私・・・」
「そう。この世界に紛れ込んだんだね。」
「じゃあこの世界にもともといた私は・・・!?」
「君の世界にいるはず。でも、動物が喋らないだとかには、気付いてないよ。その世界で起きた記憶も入れ代わっているはずだから。」
「ふぅん不思議ね。でも私、魔法とかは信じない主義よ。王子様も、運命も、馬鹿馬鹿しくて聞いてられないわ。」
アリスは髪を撫でながら、冷たい目つきをして遠くを睨んだ。オオカミはその言葉を聞きながら、持っていた袋を大切そうに抱きしめた。
「ねぇ、その袋、何?」
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