17人が本棚に入れています
本棚に追加
『何を笑ってるんですか!!魔王に脅かされたこんな時代だからこそ勇者が必要なんじゃないですか!!』
セシルはテーブルの上に身体を突き出して熱弁を奮う。
『あぁ…悪い悪い。しかしどーにも俺には勇者ってのに実感がわかなくてね。一体何を以ってして勇者なんかなぁ~とね。』
いきり立つセシルをまぁまぁと両手で諌めながら言う。
『それは…僕にも実感がないのですが…。実は今日が僕の誕生日でして。朝、母が起こしに来たのですが…そのときに言われまして。』
このパターンは…
嫌な予感がする…。
『…なんて言われたんだ?』
『"起きなさい。私のかわいぃセシルや。
今日は王様にあいさつに行くんでしょう?
貴方には辛い思いをさせるケド、これも勇者として生まれた宿命。
魔王を倒して世界を平和にしなければならないのよ。
貴方がハタチになったら告げようと今は亡き父さんと約束していたの。
あら、話が長くなってしまったわね。さぁ用意が出来たら行ってらっしゃい。"
…と。』
(だっ…ダメだコイツ…早くなんとかしないと…。)
軽く目眩がする。
俺は右手で頭を押さえながら目の前の可哀相な青年に尋ねる。
『いや…魔王現れたの二週間前じゃん?そもそも魔王って存在事態ありえねーわけなんだが、ハタチになったら伝えようってお前生まれたとき魔王とか存在してねーんだから…勇者もクソもねーんじゃねーの?』
俺の核心をついた言葉に目の前のセシルは目を丸くしている。
『母親に勇者とか言われる前は何してたんだよ?』
『…あっ、えーと、高校に行かなくなって…それからは毎日家でゲームばかりやってました。』
『仕事は?』
『いや働いたら負けだと思ってるんで。』
そのとき俺は確信した。
こいつはニートだと。
そしてコイツの母親は働かない息子に嫌気がさし
勇者という肩書を与え
体よく家から追い出したのだと…。
最初のコメントを投稿しよう!