十四章

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先程からしばらく無言で歩いているが人の気配が殆どない。 普通なら足止めをするために出てきてもよさそうなものだ。 物音がしたと思って振り返って見てもそこにいるのはネズミだったり蛇だったり、はたまたよくわからないものだったりした。 「静かだねぇ………。」 「過ぎるんですよ。」 そしてまた沈黙。 足音と水の音が無駄に大きく響いている。 「静かだねぇ………。」 「あなたもう23回目です。」 「そう?」 「そうですよ、ちゃんと数えてますから。」 「ふふっ。」 そして23回目になるであろう沈黙。カサカサと足元を何かが走った。それにユウがビクッと飛び上がり横にいたヒカルに抱きつく。 ヒカルがぐえっと蛙が潰れた様な声を出した。 「ご……ごめん、ヒカル……。」 「大丈夫……びっくりしただけだから…。」 すぐにユウは離れた。 するとぽっと前方が光った。 五人は身構えるがそれが古びた人形(ヒトガタ)だとわかると少し警戒を解いた。 「なんじゃこりゃ、WCJCかな?」 「じゃない?でも何だろこれ。」 すると突然ムクムクと人形が動き出す。再び身構えると人形はペこりと礼をした。それに合わせて五人も礼をし、不思議そうに顔を見合わせる。 よく見るとピエロの容姿をしており、クルクルと回ったりピョコピョコと歩いたりしている。 時々帽子の乗ったボールの様な頭を五人に向け、すでに吊り上がっている三日月みたいな口を更に吊り上げた。 「来いって事か?」 「だねぇ…………。」 手をピョコピョコさせたり変な動きをしながらピエロは五人を導く。 しばらく歩くとピエロは立ち止まり振り返るとなぜかユウの両手を握り踊りだした。と、言うか回った。 「っ?!」 当然ユウは混乱し四人は焦る。 一通り回ったところで人形は手を離しとんぼ返りをして五人から離れ、 ―パンッ 内側から破裂した。 すると後方にあった扉が開きピエロの破片が吸い込まれていく。 「ちょっと手の込んだ演出ですね。向こうからの殺気がハンパないですよ。」 「当たり前だけど少数のものじゃない、かなり大勢。」 「でも、入ってすぐには多分襲って来ないと思うよぉ。」 「どうしてリーダー?」 コウイチはふにゃりと笑って行こうと促した。 .
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