十四章

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―コウイチVS???― 「ギャギャギャギャッ!」 ぶしっと湿った音を立てて血飛沫が舞った。返り血がかかってもあくまでコウイチは冷静だ。相手は血みどろで氷の柱が刺さっていたり風穴が空いている。 「あ゛ぞべよ゛……ぼぐど…。」 だらだらと涙と血を流し声を絞り出す。意外と早かったのはコウイチだからできる技なのである。 「憐れだねぇ……。」 うっすらとコウイチは冷笑を浮かべる。 「最後ぐらいは楽に逝かせてあげる。」 コウイチがとどめを刺そうとした時周囲の霞が払われた。 「どうして……おいらしか解けないのに。」 この魔法は掛けた本人しか解けない。もっと言うと術者が死んでも解けない永久で無限に続く迷宮なのだ。 「っ、ユウちゃん!」 異常な濃さの魔力を感じて振り返ると全てを真っ赤に染めたユウがいた。 コウイチは動揺を隠しきれずユウの元へと駆けていく。 しかしそれは阻まれた。 「やめ…ろ……離せ…!」 「どう゛じで………あ゛ぞんでよ…あ゛いつが大事な゛の?」 何倍もでかいそいつはコウイチの事をわしづかみにし、シャレにならない程の握力で潰そうとした。ミシミシとコウイチの骨が軋む。 「っ……離せっ!」 ゴッと音と共に開いていた口に氷の柱が刺さる。奴は白目を剥いて絶命した。 完全に動かなくなったのを確認すると、今度こそユウの元へと駆けていった。 「ユウちゃん!」 「アハハハハハハハハハッ……」 ユウには届いていない。 コウイチは必死に呼び掛けたが全く反応しなかった。 「コウイチ……離れろ。」 「あんた、レツじゃないね。」 「お前にはユウを元に戻せない。下がってろ。」 「話聞けよ……ってか今まで暴走してたのをおいらが全部抑えてきた。あんたこそ下がってよ。」 「それはできない……。」 二人でそうこう言っている間に周囲の気温が上がってきた。 ユウが暴走しかけているのだ。 「やっと……やっとここまで来たんだ…邪魔はさせない。」 「…………?」 「おい………早く出てこいよ、何年も待ち侘びてた時だぞ?」 「わかっている、お前も余計に手を出すな。」 レツの隣に先程奥に消えた男が降り立つ。瓜二つだ。 「早く解いてくれないか、俺の姿をとるのを……周りから見て気味が悪いだろう?」 「それもそうだな。」 .
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