十四章

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「これじゃ……守れないよ………みんなの事……。」 血が地面を染めていく。 ヒカルはその赤い池に倒れ込む。 赤がヒカルの服や髪を浸していく。 朦朧とする意識の中、あるものが視界に入った。 「……ごめ……約束…守れ……なさそ……う…。」 以前モモからもらったペンダントを強く握った。 「悔しいよ……こんな所で…皆と……離れ…たく…ない………。」 ぽうっと緑の光がヒカルを包んだ。もちろん、ヒカルのものでもアヴァールのものでもない。ペンダントの石から出されたものだった。 「あ……あれ……?」 濡れている感じがしなかった。 傷も痛くない。 不思議に思って辺りを見るとあんなに浸していた血の池が無かった。 「………お前……何を…?!」 アヴァールの驚きの声を漏らすがヒカルには届いていなかった。 「ありがとう……。」 ゆっくりと立ち上がり強くペンダントを握った。 そしてアヴァールを睨んだ。 「自らに治癒魔法は使えねぇはずだ。」 「あれねぇ、俺じゃないんだ。俺のね、大切な人が助けてくれたの。」 綺麗な笑顔をアヴァールに向けた。何かが違う事にアヴァールは 気付く。 「大切な人が……皆が………俺を守ってくれる。」「何が言いたい……。」 「皆が俺を支えてくれるなら、こんな俺に力を貸してくれるなら、俺はそれを守る盾にだって剣にだってなってやる!」 光が溢れ高い音がした。 しかしそれは以前の様に悪質なものではなく優しい綺麗な音色だった。 「なっ………。」 一瞬だった。 風を纏い激突し反対側の壁まで壁がへこむほどぶっ飛ばした。 アヴァールはもう動かなかった。 死んではいない。 気絶しただけである。 「多分………大丈夫だよね?……うん、しばらく起きないはず……。」 しばらく自問自答して起きないのを確認する。 すると後方からドサリと音が聞こえた。 「……り……リュウっ!」 振り返るとそこには腹の辺りを血で染めて倒れたリュウヤがいた。すぐにヒカルはそばに駆け寄る。 「おい、今から皆に面白い話を聞かせてやる!」 何かに喜ぶように言ったレツ。 しかし、今のヒカルにはどうでもよかった。 「リュウヤっ……リュウヤぁ………っ!」 抱え上げて必死に呼びかける。 だが、それはリュウヤに届いていないようで焦点が定まっておらずぼんやりとしている。 .
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