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「………少しだけ……思い出した……。」
ユウは、じっとレツを見た。
レツも目を逸らさない。
「レツ………お前は俺の何なんだ………?」
そして、しばらくの沈黙の後レツは小さく笑った。
「だから面白い話をしてやるって言ってんじゃん!」
「俺の話のどこが面白いんだよ!」
「なんだ?怖いのか、ユウ?」
「違うよ、……ただ………。」
「ん………?」
「……いや、なんでもない。」
「じゃあ………どこから話そうか?」
ニヤリとレツは笑った。
しかし、笑っているのは顔だけでユウを見る瞳はどこか悲しそう
だった。
俺がユウと会ったのは15年前。
瓦礫に埋まるようにして座りながら俺の事をずっと見てた。
いつもならそんなの見捨てるのにその時だけは何故か見捨てることが出来なかった。
「名前は……?」
「……………。」
そん時ユウは口をぱくぱくさせた。
「喋れないの………?」
『ナマエナイ、シャベレナイ』
口の動きでわかった。
「……俺はレツ、あんたはユウ。いいか?」
『ワカッタ』
赤目で赤髪。
俺はユウに惹かれた、その力に。
普通の奴なら逃げ出す程の異質な魔力に。
『レツ……マリョクナイ』
無い訳じゃない、
低すぎて感じ取れないだけ。
だから魔法が使えなかった。
「来いよ。」
その時は気が付かなかったが、
俺はユウに力に憧れる以外に別な感情を持った。
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