1053人が本棚に入れています
本棚に追加
「まさかここまで思い出すとはな……。」
「それなりに丁寧に話してくれたからあまり頭は痛くならなかったよ。」
「………違うだろ、目の奥が笑ってねぇよ。」
「………って事はお互い嘘は通じないね。」
そう言ってユウは座りこんだ。
「ほんとはだいぶ頭が痛くて立ってられないよ。」
「………だろうな、だいぶ顔歪んでるしな。」
「…………返してくんねぇかな、俺の魔力。確か分離と構築だよね、レツのアビリティはさ。」
「ちょっと違う、俺のは対象物のエネルギーを好きなだけ奪って
自分の力として使える、それだけだ。」
それに……と、言いユウの胸倉を掴んだ。
「あの時は俺が躊躇したからお前の全てを盗れなかった。だけど
今なら全て盗れる。」
「そんな事したらレツがこの赤目と赤髪に苦しむよ。」
「ふっ……見た目なんてどうでもいい、結果が……中身が上がればそれでいい!」
「すっかり………変わっちゃったね、俺のせいかな?ごめんね。」
「っ………そうゆうとこ、嫌いなんだよ!俺は偽善ほど嫌いな物はねぇんだよ!」
そう言ってレツはユウを思いきり殴った。
ユウは止められたはずなのにまともに受け少し飛ばされる。
「……レツが熱くなってどうすんの?俺は別に逆上なんてしないよ。」
「嫌いだ………お前なんか……。どうしてあの時俺なんかといたんだ?俺はずっとスラムの奴らに尽くして来た!なのに好かれるのはいつもお前………表じゃ一番の
嫌われ者の赤目のお前ばかり!
なんでっ……いつもっ!」
またレツはユウを殴る。
それでもユウは避けない。
「どうして避けない!どうして返さない!」
「だって、わざと嫌われようとしてるでしょ?あの時もそうだった。」
「違う!今度こそお前を消す為に俺はずっと待ったんだ!」
―パァンッ
「………?!」
「いい加減にしろよ……。」
ユウはレツの頬を思いきり打った。その場にいた者は皆驚き立ち尽す。
「俺がレツと別れた日、ぼろな馬車に詰め込まれてスラムから離れていく時小窓からお前の顔を見たんだよ。そしたらレツの口なんて動いてたと思う?ごめんな、って……。」
「ユウさん………。」
軽くリュウヤがユウの袖口を引っ張った。
「大丈夫、俺は。リュウヤは危ないから下がってて。」
リュウヤを見て少し微笑んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!