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「そうだ……そんなことは今も……昔も……しない……。それに………気がついたのは…その日の夜にレオが……やって来たからだ…………。」
「……どうして?」
「ユウを助けてくれ………と頼んできた……。わ……ざわざ一つだったのを二つに…分けてまで来たから……余程の…事だと…確信した……。」
ユウは怪訝そうな顔をした。
「どうゆう事だよ……。」
「知ら……なかっ……たの…か?まあ…いい……今……こいつを……かえ…せる……のなら…それで……。」
レオが近付いてきてユウに顔を寄せた。
「うわっ……。」
「ふっ……やっと…だな……。もっと話したいが……時間がない………。」
「はっ……?嘘だろ……まだ………まだ……俺は話したいことが、たくさんあるよ?」
「……時間…なんだよ、…………最後にさぁ……前みたいに……呼ん…でよ、ユウ………お前が……付けて………くれた名で……。」
「…っか……レッカ……、懐かしいな?確か劣って字を烈に変えて華と火を掛けてレッカ。激しく燃える炎の様に咲く華だ!」
ユウは顔をグシャグシャにしながら今できる精一杯の笑顔をした。
「あ……りが……とう……、ユウ……ひが……しの…町へ……行け…………真実は……そこに……」
そこから先は聞こえなかった。
レツは弱々しく口を開くがユウまで届かず口元に耳を近付ける。
「何………レッカ?」
ほとんど苦しく息をする音で掻き消されていたが微かに聞こえた。
「……………華に………なれ……生きろ……ユウ………」
力強い一言だった。
はっとして顔を上げる。
うっすらとレツは笑いゆっくりと目を閉じた。
「レツ……レツ?……レツっレツっ…………レッカぁぁぁぁ!」
誰ひとりとして一歩も動かなかった。否、動けなかった。
そして、慌ただしい音と共に援軍を率いた特二隊がやってきたが、やはり彼等も動く事はできなかった。
「ああぁぁぁぁっ!」
叫びにも似た泣き声が辺りに反響して悲しみの声はどこまでも響いた。そしてこの声はレクイエムのように深く皆の心に染み付き離れなかった。
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