君が初めて。

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首から鎖骨へ ゆっくりと手を滑らせていく。 すると石田の肩がびくりと跳ねた。 「…っ!」 「悪ぃ。 驚かせちまったか?」 「驚くに決まってるだろう! こういうのは…初めてなんだから…」 「…そうだったのか?」 「今だって君が…っ …ああもう…君に見られているのは落ち着かない」 「ああ。じゃあ、後ろ向けよ」 後ろを向いた石田は 背中を伝う液体に身を震わせた。 流れたそれは彼の下腹部も濡らしていく。 背中に触れた俺は その身体の冷たさに驚いた。 「黒崎の手は温かいな」 「お前が冷たすぎるんだろ」 「それは君がいつまでも 僕をこんな格好で待たせたからだろう?」 「…すぐに熱くさせてやるよ」 肩から腰へと身体のラインをなぞるように、 身体の全てに触れるように手を滑らせていく。 腰の当たりで指を動かすと 石田はくすぐったそうに身をよじった。 しばらく愛撫を続けていると 彼の身体がほてり 強張っていた四肢から徐々に力が抜けていくのを感じた。 「…気持ちいいか?」 「…ん……」 石田はけだるげに その濡れた瞳で俺を見上げた。 「思っていたほど… 悪くは…ない、かな」 まあ僕は君しか知らないから 上手いかどうかは分からないけど、と 最後に少し付け足して 石田はまた双眸を閉じた。 それから。 二人きりの部屋で。 甘酸っぱい香りに包まれて。 俺達の間に穏やかな時間が流れた。
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