Voyage -その先に見えるもの-

Ⅱ

で、暇になった私は、親戚の家を訪ね今広島県にいる。

というのは口実だ。

親戚の家なんてどうでも良かった。

けれど、そうでも言わなきゃ旅行など出来ない。

本当は、広島を通り過ぎて沖縄に行くつもりだった。

けれど、ひとりで沖縄というのもなんか淋しすぎる。

で、言うとおり広島県の尾道にいる。

でも、親戚の住んでいる場所は尾道の隣街、福山だ。

テレビで尾道を見て、死ぬ前に一度はいってみたいな～

な～んて、なんとなく思っていた場所だった。

それが、こんなふうに夢が叶ってしまうことが怖い。

神様が最後のご褒美を、私にくれたとでもいうのだろうか。

なら、嬉しくない。

想い出はできるだけ少ない方がいい。

それが増えたら増えた分だけ、私は生きたくなってしまう。

だから、イタズラにこんなことはやめて欲しい。

なんて、今更か…

私は、ため息交じりに呟いた。

だって私は、もう尾道に来てしまったのだ…。