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私の中に癌が見つかった。 末期らしい。 こんなに元気だというのに、あと半年くらいしか生きられないという。 主治医が大真面目な顔をして言うのだから、たぶん間違いないのだろう。 それにしてもだ……。 私は、つい笑ってしまった。 だって、黙っていても笑えてしまう主治医の顔。 その顔が真顔になって、尚且つ神妙な面持ちで私の“余命”を告げるのだから、可笑しくてたまらない。 今だって、会計のさなかだというのにあの主治医の顔がチラチラとチラつき、私に纏わり付いてくる。 と、思わず吹き出しそうになってしまうのだ。 思い出し笑いは、はたらから見れば気味が悪い。 なのに、どう頑張っても我慢が出来ない。
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