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「抗がん剤の治療をしたって、どうせ治らないんでしょ?なら、したってしょうがないじゃない。これが、絶対に治る、って保証されてんなら、考えてもいいけどさ」
ついでに、主治医も交換してくれるんなら考えてみてもいいけど?
という言葉を呑み込んだ。
今の母は感情的になっている。
そんな時に、冗談を言っても聞き入れる器用さはない。
「そうかもしれないけど…。でも、お願いだから治療をしてちょうだい。もしかしたら、良くなる可能性だってあるのよ」
「ならないよ。あの先生が言ってたでしょ?アタシは、あと半年の命だって。気持ち悪い顔をして。なら、アタシの好きにさせて」
鈴香……?
母の頼りない声を背中に受けながら、私はひとり病院を出た。
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