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気づいたら、見慣れない天井と心配そうに俺を見つめる二木と大崎くん。
背に感じる柔らかさに、ベットかなにかに寝かされていることがわかった。
「きゅうに倒れたから、心配したぞ。」
「寿くんに連絡しましたから、すぐに迎えにくると思いますよ。」
「―――えっ」
思わず声をあげて起き上がっていた。
―――だめ、だめだよ。
迷惑がかかってしまう。
「悪い、すぐ帰るから。」
「いや、駆さん、今から寿くんくるって」
「大丈夫。寿には俺から連絡するし。」
「そうじゃなくて、ッ―――っ!?駆さん!!!」
ベットから大崎くんと二木の静止を振り切り立ち上がった。
と同時に、すごい目眩に襲われた。
とてもじゃないが、立っていられない。
その場にヘナヘナと座り込めば、大崎くんに支えられた。
そして、タイミングよく鳴り響いたチャイム。
大崎くんに支えられベットに戻される。
二木はチャイムの応対のために部屋を出て行った。
予想どおりというか、なんというか、チャイムを鳴らしたのは寿だった。
そのうえ、また予想どおりにその横には当然のように阿井ちゃんの姿。
「―――駆ッ」
「―――駆ちゃんッ」
二人がベットまで駆け寄ってきた。
寿は俺の手をとり、頬に手を滑らせ熱を確かめるようにして俺の顔を覗く。
その表情は確かに心配の色が出ていた。
「ごめんな、出掛けてたのに」
「そんなこと別にいいよ、それよりお前だろ?」
“大丈夫か?すぐに帰ろ”そう言って、抱き締められる。
嬉しいはずなのに、何故か複雑に絡みついた思考が、触れることを否定する。
だめ。
だめ。
触れたい。
触れたくない。
好き。
でも、寿は俺のこと、
「帰ろう、駆」
好きなんかじゃないんだ。
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