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いや、好きじゃないとは違う。
寿にとって俺は、きっと親友みたいな位置づけ。
「大丈夫、だから」
「駆…?」
寿の両手をほどいて、にこりと、笑って見せる。
落ち着かせるように彼の手をぽんぽんとたたいてやる。
だから、親友を心配するのは当然。
なら、そんな大切な親友のために行動するのも当然で。
「二木、わりぃ、今日泊めて?」
「――――は?」
「寿、阿井ちゃん連れて帰れ。大人数だと迷惑だから。」
「なに言って、」
ふらふらする頭で、寿を突き離すようにしてどうにか自分から離す。
驚いた顔の彼に、“帰って”そう言う。
何事かと、顔をしかめる相手。
わけがわからないと、あからさまに疑問符が頭の上に浮かぶ阿井ちゃん。
きょとんっと成り行きを見守る大崎くん。
二木は、
「…寿くん、駆さん今日は預かるね。」
そう、何かを察したように言い添えてくれた。
“呼んだの俺だけど、動けないみたいだし”
そう言われてしまえば、次はここに残ると食い下がる寿を巧みに言いくるめて、彼は寿と阿井ちゃんを見送りに玄関へ。
二人の姿が見えなくなった途端、せきをきったように溢れたのは涙にならないおえつ。
「かけるくん?」
規則正しく背を撫でられ、話すことを促すように名前を呼ばれる。
「寿は、俺を恋人として好きじゃないんだ。」
「―――え?」
「アイツは、友愛と恋愛を吐き違えてる。」
俺は、胸の中にあった気持ちを吐き出すように話し続けた。
寿が阿井ちゃんを好きなこと。
それをわかったうえで、1年もの間、彼を拘束していた自分の酷さ。
彼の背を押そうと考えれば考えるほどに、それと反して行動してしまうこと。
全てをとろしたときには、二木も大崎くんの隣に戻ってきていて、冷静に話していたつもりだったのに、自分の頬はびしょびしょに濡れていた。
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