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寿さいど
二木に追い出され、阿井ちゃんを自宅に送っている途中だった。
「いいの…?駆ちゃん、二人に任せて」
「………。」
「心配、なんでしょ?なら、」
“二木の家、戻ろ?”
阿井ちゃんは、にっこり、さっきの駆みたいに優しい笑みを浮かべて戻るように促してきた。
本当は、俺だってすぐにでも戻りたい。
大切な恋人が、倒れたんだから。
でも、
「俺は、駆本人に拒絶されたんだ。
だから、今更戻れねぇよ。」
そう言うと、阿井ちゃんは押し黙ってしまった。
そんな彼を自宅に送ってから、車を走らせたのは駆の自宅。
着替えとか、二木のところに持って行こうと考えたから。
それに乗じて、二木の家に無理矢理でも上がり込んでしまえばいい。
そして、さっき阿井ちゃんにも言った、駆が俺を拒絶した理由を聞き出すんだ。
そんな、ちょっと物騒な計画を立てながら部屋に入った。
玄関には、駆が普段履いているスニーカー。
廊下には荷物が転がっていた。
―――駆は、二木の家にいるんじゃねぇの…?
急いで中に入り、寝室に直行する。
そこには、
「―――かけ、るッ」
ぐったりとする恋人が、ベットに横たわっていた。
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