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「ちょっと待て。聞いてもいいか?」
「何?」
「この1か月の間、君は俺と付き合ってたんだよな?」
この言葉に彼女は頷いた。
「始まりから今まで俺を好きにはなってなかったって事か?」
そう聞きながら、俺の心臓がドクンと鳴った。
佐々木の言葉が甦り、あの通りの言葉が彼女から返ってきそうで、その口が開かれるのが怖くさえ思えた。
俺の問いに彼女は小さく横に顔を振って言った。
「少しだけ好き」
意味が解らなくなっていた。
少し好きだけど、これ以上好きにはなりたくないという事か?
キスしたらそれ以上好きになる?
頭が混乱してくる。
「俺みたいな奴は好きにならないって……」
混乱する中、俺は聞いていた。
「だって、川口さんて付き合っても遊びでしょ? 飽きたらポイッて捨てるんでしょ?」
「えっ?」
「だって、あの時そう思ったから……」
「あの時?」
「うちのドアに指を挟んだ日」
その言葉を聞いて、あの日の事を思い出す。
俺の中で、彼女との付き合いを強引に運んだ日だ。
キッチンでビールを飲み干す彼女が、心なしか怒っているように感じたあの日。
女と終わりにした日だ。
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