1422人が本棚に入れています
本棚に追加
/231ページ
女の事を聞かれ、それに答えたあとの彼女の様子。
それを思い出している俺に、彼女が言う。
「川口さんの歳になって結婚もしてなくて、女の人がいて、簡単に別れて、アタシに付き合おうって言うのって……。
アタシ遊ばれるんだって思うもん」
下を向いたまま彼女は続ける。
「好きになって、互いをもっとよく知って付き合おうって言われるなら解るけど、アタシの事よく知りもしないのに付き合おうなんておかしいじゃん。最初から遊びじゃん」
「いや、これから知っていけばいいと俺は思ってたんだ」
「違うっ! 食うだけ食ってポイッとするよ。だから絶対食わせない」
「君の事をそう見た事なんてない」
俺の目を見つめてくる彼女に、俺は続けた。
「女なんて面倒臭い生き物だって、ずっと思ってた。確かに今まで遊びで付き合った女は多いと思う。
君の事だって最初は変な女としか思ってなかったんだ。しかし、君に惹かれてるのは事実だし、もっと君を知りたいと思ってる。俺の事も知ってほしい……。
君から捨てられる事があったとしても、俺が捨てる事はない」
「そんなの解らないじゃん」
「いや、解る。俺が君を好きだから」
「変な女なんでしょ?」
「ああ、変な女だ。だが、変な女を好きになった俺も変な男だ。こんな事……、初めてだよ」
「ぷっ。川口さんて変な人」
クスクスと笑う彼女に顔を近付けると、彼女は言った。
「ちゃんとその口で好きって言って欲しかった。アタシを好きって……」
彼女の言葉を飲み込むように、その唇に触れた。
最初のコメントを投稿しよう!