23の背中

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  『…これで全員の背中見送れたね』 僕はどうしても見たかった。 僕がここを卒業する時に、いつもは何気なく見ている皆の姿を。 卒業していった皆が、どんな気持ちで、どんな思いで、この日を過ごしていたのかを知りたかった。 『樹音や裕太、ライアン、羅夢、おやびん達もこんな気持ちだったのかな…?』 この5年間、色んな出会いがあって、別れがあった。 残されていく僕らの方が辛いんだ、そう思ってた。 だけど、 『残していくのも、辛い』 “卒業”を経験してから初めて気付くこと、たくさんあるんだね。 もっとこの場にいたい、もっと色んなことしたい、そして何より、もっと皆と一緒にいたい。 そんな気持ちが頭の中で渦を巻く。 だけど、どんなに足掻いても“卒業”は変わんない。 それに、後悔は何一つない。 だって、楽しかったから。天てれが大好きだから。皆と出会えたから。これが別れじゃないから。 だから大丈夫。 だからまた頑張れる。 僕はもう一度、楽屋を見渡す。 ここで仲良くお菓子食べたり、ギャグしたり、時にはケンカもした。 でもその分の仲直りもして、楽しく過ごした。 …思い出がいっぱいだ。 その思い出の空気を僕は思い切り吸い込んだ。 『…ありがとうございました!』 大きな声を出して、楽屋に一礼をした。 そして勢いよくドアを開け、楽屋の外へ飛び出すと、 一磨「おせーよ、早く行くぞ」 千帆「みんな待ってるんだから」 聖夜「遅いって怒られたら拓巳のせいにするからなー」 あか「ってか、笠ぴーのせいだもんね」 『み、んな…』 先に行ったはずの4人が立っていて、僕は驚いた。 だけど、同時に嬉しさも込み上げてくる。 皆の顔にも笑顔が零れていて、やっぱり天てれは最高だ、なんて思っちゃって。 『ごめん、ありがとう。…よし、行こっか!』 そう言えば、また笑顔で頷いてくれる4人。 この先、もしかしたら辛くて悲しい壁にぶつかるかもしれない。 どうしようも出来なくて、立ち上がれない道があるかもしれない。 でも、僕らには仲間がいる。 ここで出会えた最高の仲間が。 “卒業”は一生の別れなんかじゃない。始まりなんだよね? だから僕らは進む、歩んでゆく。 仲間と築き上げた“絆のチカラ”を握りしめて―… 終
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