40人が本棚に入れています
本棚に追加
聖夜「うおっ、もう楽屋に拓巳だけ?」
『そうだよ、早く皆の所行かなきゃ』
一磨「みんな早いなー、」
やっと戻ってきた二人は、ガランとした楽屋を見て少し驚いている。
楽屋を見渡す一磨につられて、僕と聖夜も見渡してみる。
ほんとここでは色んなことがあった。
その色んなことが一磨の頭にも、聖夜の頭にも駆け巡ってるんだろうね?
聖夜「楽しかったな、」
一磨「色んなことあったもんな」
『…うん、』
それぞれが思い出に浸りながら、僕たちは笑みを零す。そして僕は、それを横目で見た。
泣き虫だった聖夜も今ここにはいない。
甘えん坊だった一磨も今ここにはいない。
それがわかるほどの、成長した顔だ。
今ここにいるのは、皆をまとめて、叱るべき所を叱り、誉めるべき所を誉める、全員を引っ張ってくれた聖夜がいる。
今ここにいるのは、影で皆をフォローして、支え、見守って、笑いも厳しさも優しさも皆に届けてくれた一磨がいる。
その強さある二人に僕はいつだって助けられてきたんだ。
『…ありがとう』
一磨「…な、なんだよ、いきなりー。気持ち悪ぃよ」
聖夜「そ、そうだよ!そんなしんみりするなんて、らしくないよ?」
『あはは、確かに!』
僕が笑うと、二人もつられたように笑って、僕の頭や肩を叩いてくる。
そのいつもと変わらない瞬間が、涙を誘う。
けど、泣かないよ。(昔の聖夜みたいだもんね、)笑
一磨「、そろそろ行くか?」
聖夜「行っちゃいますか!」
『先、行ってて。すぐに行くから』
聖夜「え、なんで………」
一磨「…わかった。ほら、聖夜行くぞ」
聖夜「Σぅえっ!?」
疑問を持つ聖夜を一磨は引っ張って、楽屋を出た。
バタン、という音を残して。
『一磨、聖夜、ありがとう』
二人の後ろ姿にお礼を言う。
返事が来ないのは知っているけど、言わずにはいられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!