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「あんだよ、つまんねぇの」
俺は荒い呼吸を繰り返す相手を上から見下ろす。
傷だらけの相手に対し、俺は顔を一発殴られ、口端を軽く切ってしまっただけ。
「おい、もう終わりなのかよ……弱っちぃな」
「……っ」
俺は相手と目線を合わせ、皮肉な笑みを浮かべる。
しかし、そんな俺に、相手は同じように笑って見せた。
「あ? 何笑ってんだよ……」
――こいつ、もう一発入れてやろうか
そう思った直後だった。
俺は背後に漂った悪寒に反応し、振り向く。
「……え」
俺は言葉を失った。
目の前にいるのは、漫画の中でしか見た事のなかった――化物。
濃い茶色の肌、鋭い爪、悪魔のような翼を持った奇怪な生き物。
「な、んだ……!」
突如身体を走った電流のような痛み。
身体がみるみる動かなくなって行く。
「はは、あの噂マジだったんだな」
身体が麻痺した俺を嘲笑う相手。
「テメぇっ何しやがった!」
「終わりだよ近江!」
相手は俺の問いに応える事はなく、その場から姿を消して行く。
「冗談キツイっての……」
俺は残された化物を見て生唾を飲んだ。
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