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――いってぇ……
俺は震える手でゆっくりと身体を起こす。
かなり派手にぶつけられたのか、身体中が痛い。
しかし、余計な事を考えさせないように、化物は俺の首を締め上げた。
かなりの力のせいか、脚が宙を掻く。
「ぁ……は、が……」
――く、苦し……
あー、短い人生だったな、俺。
意識が薄れ行く中で、俺は短かった人生を走馬灯のように思い返す。
とうとう、目の前が真っ白になって来た所だった。
「チェックメイト……」
俺の耳に、指の弾く音が響く。
瞬間、大量の酸素が体内に取り込まれ、噎せる。
「ゲホっかは!」
身体が地面に付いている。
首を抑えながら顔を上げると、そこに化物の姿はなく、代わりに一つの影があった。
しかし、すでに目の前が霞んでいた俺には、それが誰なのかを確かめる事は出来なかった。
ふと、俺の身体がまた浮遊感に包まれる。
先ほどとは違う、優しく暖かな温もりが俺を包み込む。
「やっと見つけました……姫」
――姫……誰の事だよ
そこで、俺の意識は途切れた。
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