聖子

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恐らく、亮二は来ないだろう。 聖子は初めから知っていた。 まともな人間なら、あんなことをする女を愛したりする事はないだろう。 それでも、約束したのだ。 だから、教会へやって来た。 こない人を待つために。 後10分・・・ 時間が経つのが、こんなに遅いなんて・・・ 時計の針が進んでないように感じた。 来るはずのない人を待っているから? それとも、来ると心のどこかで願っているから? 後5分・・・ これからどうやって生きて行く? どうやってこれから幸せを探して行く? 後2分・・・ 亮二は、きっと来ない。 なのに、さっきからどうして時間ばかり気にしているの? 来ないのだから、時間など気にする必要もないのに。 後1分・・・ 後30秒・・・ 後10秒・・・ 後1秒・・・・ 終わった・・・亮二は来なかった。
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