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携帯が鳴った。続いてトラックの激しいブレーキ音。叫び声も聞こえる。
なのに、こんなに音が聞こえるのに、本当に聞きたい音は聞こえなかった。
嬉しそうに笑う声も、すすり泣く声も、全く聞こえない。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……
助け……られなかったの……?
あんなに必死に、必死に助けようとしたのに……
視界が赤く染まっていく。
思考が白く染まっていく。
ああ……、もう、私……
何も聞こえなくなる。聞きたい事も、聞きたくない事も何も……
――死ぬなッ!!
……聞こえたよ。最後に、君の声が。
助かったんだね……。良かった。
そして本当に、無音になった――
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