恋する乙女

3/5
前へ
/10ページ
次へ
斎藤敬太はワープロ部に所属する高校二年生であり、趣味はなく、至って普通の生徒なのだが、唯一人と違うところがある。 それは… 「斎藤くん。おはよう。今日もかわいいね」 敬太は廊下ですれ違う女子に必ずといっていいほどそう言われる。 敬太は幼いころから身長が小さく、現在でも158㎝という悲しい結果だ。そのため、かわいいかわいいと女たちにもてはやされた。 しかし、それは敬太にとって大問題であった。 かわいいと言われるということは、好きな女の子から自分を異性として見てもらっていないということである。 そのため、敬太は勇気を出して告白するたび「彼氏にはなれない」とか「付き合うってことが考えられない」とか中学時代に散々言われてしまい、敬太は高校に何の期待も持たず入学し、ワープロ部という地味な部活に入ることにより、自分をかわいいというキャラから、せめて地味キャラに変えようとしていた。 しかしながら、敬太のかわいさは敬太がどんなに地味キャラを装っても隠せるものではなく、敬太の入った高校でも、敬太の熱烈なファンは数人いた。 その一人が西園寺エリカであった。 彼女は敬太の所属するワープロ部の先輩ではあったが、ワープロ部に参加している敬太を見ているうちに敬太のファンになった。 「敬太くん…敬太くん…敬太くん…」 しかし、エリカは緊張してなかなか敬太に話しかけることはできず、いつしかその原因は敬太に好意を寄せているのではないかと考えるようになった。 そして、悩み抜いた末にエリカは敬太に告白をする決意をした。 しかし、エリカは人見知りかつ引っ込み思案であり、傷つくことを人一倍恐れていた。そのため、告白をするという決意は固めたものの、告白をいつするかについては決めかねており、今日こそはと学校に行くのだが、何もできないという結果ばかりであった。 そんな自分に許せなくなった彼女はある決断をする。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加