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春だ。
陽気は暖かく、風は心地よく、花は美しい。
特に朝なんて最高だ。その全てを一度に感じられるのだから。
それに、春は出会いの季節とも言う。
心を許しあえる友?絶世の美女?助けあえる仲間?アダムとイブ?
何にせよ出会えたら最高だ。
もう一度言おう。
春だ。
最高の風景で、最高の気候で、最高の人と出会える、最高に幸せな季節なのだ。
つまり―――――
「避けてばかりでは勝てないぞ、関平!」
「そんなこと言っても、寝起きだから体が動かないんだよ」
「言い訳無用!」
「ひぃぃぃ!!」
朝っぱらから、青龍偃月刀で追いかけまわされるなど、あってはならないと思うんだよな、俺は。
▽
「「いただきます!」」
朝の鍛練が終わり、少し遅い朝食を取った。
姉貴の攻撃を受けた身体は所々痛むが、生活に支障はない。また、いいように手加減されたというか、なんというか、相変わらず姉貴は強すぎる。
俺は目の前の姉貴に視線をむけた。
長い美しい黒髪。それをサイドポニーにしている。
凛々しい目付きをしていて綺麗な顔立ち。
村の誰もが、綺麗だという。誰もが羨望の眼差しを向ける。
実際そうなのだ。幼い頃から見てきた俺も綺麗だと思う。
――――だけど。
だけど、だ。
幼い頃から見てきた俺だからこそ、姉貴がどれだけ恐ろしいかも理解している。
故に、反抗もできないし、逃走もできない。
そんな事をした暁には、どんな未来になるのかはわかりきっている。
瞳を閉じて、想像してごらん――――ほうら、血だらけの俺が転がっているじゃないか。
「どうかしたか、関平」
「い、いや、なんでもない」
あまりにも、リアルに想像できてしまって、身震いしてしまった。
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