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桜散る四月。
第一志望であった松花(しょうか)大学へ入学が決まった望月維織(もちづき いおり)は、校門の前で三割ほど散った桜を睨みつけ、足を一歩、敷地内に踏み入れようとした。
そこをいきなり左肩をつかまれ、後ろに引っ張られる。そのために学内へ足を踏み入れることは叶わなかった。
維織の身体は左周りに百八十度回転させられた。
視線の先には、遠目からでも目立つほどの鮮やかな赤のシャツ。なにが起こったのか、維織はとっさに分からなかった。
「デジタル写真部、お一人様入部ー」
「……はい?」
頭のてっぺんから、聞いたことのない男の声が聞こえてきた。
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