見えない相手

チャット

始まりはチャットサイトでした。

今から五年ほど前、まだ携帯でのネットが普及する以前のことです。

暇潰しとタイピングの練習を兼ねて、チャットをやってみることにしました。

今でも覚えています。

部屋の種類はクマとウサギとアヒルの三種類があって、僕はいくつかの部屋を見て回りました。

どこも賑々しく会話に花を咲かせていましたが、僕は初心者ということもあって会話に入りづらい雰囲気がありました。

そんな時に目に留まったのが、クマの２－３の部屋。

賑やかだけど、会話に不慣れな人にも心配りをしているのがわかる会話の流れが出来ていました。

そこで中心になって盛り上げていたのが、“零（ﾚｲ）”というハンドルネームの女性でした。

僕は気に入っていたペンネームをそのままハンドルネームとし、“心”と名付けて話し掛けてみることにしました。

心：こんばんは。始めまして

零：こんばんわ。始めまして＾＾

心：チャット初心者なんですけど、混ぜていただいてもいいですか？

零：どぞどぞ♪当方は初心者の方にも、安心安全の会話を提供させていただいております＾＾

心：それは助かります（笑）

そんな感じの会話が僕と零の初めての会話だったと思います。

物腰が柔らかく、少しおどけた雰囲気を織り交ぜる人でした。