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彼の心は、今どこにいるのだろう……
「ねぇ」
「ん?」
シャツを着ながら、真希は私を振り返る。
「私ね、凄いこと知っちゃった」
「え?」
「真希、この前真夜ちゃん家行ったでしょ」
真希の顔色がさっと変わった。
嘘をつけない、正直すぎる彼だから、どうやら図星らしい。
────また心が空洞になる。
「真夜ちゃんのマンション大学の近くだもんね。見てる人くらいはまぁいるでしょ」
「紗綾、違うんだ」
「違う?」
ほう、珍しい。真希が言い訳を考えれるなんて。
聞いてあげようじゃないか。
「ただ終電逃して、タクシー代も持ってなかったもんだから」
……ほう、まともな言い訳出来たじゃないか。
ならそれも、崩してあげよう。
「だから?」
「だから別に、深い意味じゃないから」
「深い意味じゃなく、次の日二人で買い物に行くわけか。お揃いのマグカップを買いに」
これは直に私が見てしまったのだ。
穏やかに笑うあの子と彼。握られた二つのカップ。
よりにもよって、私が友達と買い物している先に二人がいたもんだから、救いもない。
「…何で、知って」
「見たよ。わざわざバレないように遠出したみたいだけど、そこに私がいたの」
「…………」
俯く彼を、月明かりが映している。
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