ヒ アイ

5/18

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
  真希はふたつ心を持っていた、といえば聞こえはいい。 綺麗だと言われ続ける内面は、ただの穏やかな、感情の気迫が薄い地味な男だ。 そんな男が、ふたりの人間を愛するだか恋するだが、意味解らないけど。 常識を超越する情熱を持っていたとは意外であり心外だ。 それが良いことでならまだしも、一般的に言えば『浮気』なわけだから、心外。 『最低』の一言で片付けられるほど、私の気持ちは穏やかでない。 「で、どこまでいったの」 「いく…?」 「どこまでしたのかって話。セックスまでしたの?」 押し黙る彼を見たところ、図星。 呆れて物も言えない。 ────いや、違う。 絶句してしまった。一線は越えてないと信じたかった。 「……紗綾」 「何」 「最低だよな、俺」 「うんそうね。そんな簡単にまとめるのは絶対私許さないけど」 真希は優しい。その優しさで人を傷つける事を真希は知らない。 真希の無差別の優しさは、気付ける人にしか気付けない。 そしてきっと真夜ちゃんにとっては、それがいかに残酷かを、真希は知る由もないだろう。  
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加