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真希はふたつ心を持っていた、といえば聞こえはいい。
綺麗だと言われ続ける内面は、ただの穏やかな、感情の気迫が薄い地味な男だ。
そんな男が、ふたりの人間を愛するだか恋するだが、意味解らないけど。
常識を超越する情熱を持っていたとは意外であり心外だ。
それが良いことでならまだしも、一般的に言えば『浮気』なわけだから、心外。
『最低』の一言で片付けられるほど、私の気持ちは穏やかでない。
「で、どこまでいったの」
「いく…?」
「どこまでしたのかって話。セックスまでしたの?」
押し黙る彼を見たところ、図星。
呆れて物も言えない。
────いや、違う。
絶句してしまった。一線は越えてないと信じたかった。
「……紗綾」
「何」
「最低だよな、俺」
「うんそうね。そんな簡単にまとめるのは絶対私許さないけど」
真希は優しい。その優しさで人を傷つける事を真希は知らない。
真希の無差別の優しさは、気付ける人にしか気付けない。
そしてきっと真夜ちゃんにとっては、それがいかに残酷かを、真希は知る由もないだろう。
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