ヒ アイ

6/18
前へ
/20ページ
次へ
  真希は作られる。その人の望む人間に。 真夜ちゃんもそうだ。あの子は人の好む姿に変身出来る。 真希も真夜ちゃんも、俳優なのだ。 私の前では大人しい穏和な気質。 真夜ちゃんの前では、しっかりとした少し大人な人間。 真夜ちゃんは、私に対しては全然普通の女の子だった。 柔らかい物腰とは裏腹に、強い意志を持っている。 真希の前ではきっと、繊細なガラス細工のように儚い女を演じているだろう。 真夜ちゃんだけは、怖かった。 真希に近寄ってくるどの女の子よりも、真夜ちゃんは怖かった。 あの子は人を見る力がある。そして、手中で転がす術を知っている。 最初から真希を見破っていた。 本当は怖くないことも、少しだけ意志が弱いことも、それでこそ弱い女が好きだということも。 そして、私が真夜ちゃんに対して嫌悪を抱いていることも、きっと解っていたはずだ。  
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加