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「真夜には言えなかったけど、やっぱり好きで…。紗綾にはいつかちゃんと言わなくちゃと思ってた」
なら浮気した時に言えや。
私が言ってから言うな。
愛なんて軽いものだ。秤にかけたらきっと水素よりも軽い。
しかも時間は愛よりも軽い。
高校から彼を愛した私は、その時は必死だった。
駆け引きという技を使いまくった。
予想外に彼は引っかからなくて、苦労したもんだ。
ついに手に入れた彼を、私は無我夢中で愛していたのに。
「…じゃあ聞く。
真夜ちゃんのこと、私よりも好きなの?」
「…紗綾」
「答えな。あんたの答えによっては、包丁でズタズタに刺し殺すから。」
私はドアの前に腕を組んで、いつでもキッチンにまで行ける体制を作った。
ベッドの腕で私を見つめたまま硬直してる真希に笑いを堪えながら。
────涙かもしれない。
時間が長かった。
月明かりに映える彼はあまりにも美しくて、それがまた苛立たせた。
もう答えなんて解っている。
ただ、彼の口から聞きたい言葉だから、待っている。
真希は馬鹿なのだ。
馬鹿で、阿呆で、それでも優しい。
「……好き」
「ん?」
「真夜の方が、……好き」
────解ってたよ。
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