ヒ アイ

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  「そう」 気付いていたからか、案外軽く受け流せた。 重い声が出なかったことに安堵する。 言ってやりたい言葉は沢山あった。 だけど全て、脳味噌からすり抜けていく。 例えば、駆け引きの上手い女と付き合っても、ギャップの違いに落ち込むだけだ、とか。 お互い演技派なのだから、いつか本性を知ったときにどうなるかわからない、とか。 あぁ、駄目私、これじゃ全部嫌味にしか聞こえない。 「じゃあもうひとつ。 私のこと、ちゃんと好きだった?」 「愛して───た」 ……即答した事なんか、誉めてあげない。 またはり倒してやりたいくらいだ。 ちゃんと過去形で言えたことだけ、心の中で誉めてあげる。 本当に、残酷な人間だ。 真夜ちゃんにじゃなく私に、一瞬にして変わった。 麻薬みたいな人。 彼を知れば知るほど離れたくなくなって、知れば知るほど彼が離れていく。 でもいいの、私は知り尽くした。 彼の癖も、笑い方も、ツボも、ほとんど。  
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