日常終わり ひとつめ

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何故人はコイに「堕チル」のか。  何故人は人をアイしてしまうのか。 これは一つのアイのカタチ。 これは一つのアイのコトバ。 これは語り尽くせない程の。  アルアイノモノガタリ。  僕の両親と妹は五年前、交通事故で死んでしまった。  あの日、僕らは家族みんなで旅行に行っていた。  行き先は僕のお父さんの生まれ故郷の遠い遠い町。 そこには綺麗な岬があって、僕らは行く度にそこで並んで写真を撮り、あの時も夕陽をバックにみんなで写真を撮った。  その後、お父さんは岬の帰りにある駄菓子屋で、僕と妹にお菓子を買ってくれた。  一晩を宿で過ごし、車に乗って帰り道。  妹はいつもの定位置、お母さんの膝の間に収まっていた。妹はお母さんの事が大好きだった。  そして。唐突に僕らの旅と日常は終わった。  最初は、何が起こったのか分からなかった。  すごく大きな音がしたかと思うと、僕らの乗っていた車がものすごい衝撃で貫かれた。  次の瞬間目に激痛。  何も見えなくなった。  顔には温かい液体が流れていた。 「お、お母さん? お父さん? ルイ……?」  真っ暗な視界のまま、手探りで両親と妹を探した。 手に触れたのは、とても温かいモノだった。  そしてその時なんとなく思った。  あ、人間ってこんなふうにいきなり簡単に死んじゃうんだ、って。  それを最後に、僕は気絶した。
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