2506人が本棚に入れています
本棚に追加
「慎二……」
それから、慎二は完全に自分の近くに、誰も近寄らせなかった。
俺が近づいても、自分と一緒にいると、俺が悪く見られる事を恐れて、話すのも許してくれなかった。
「ははっ……」
誰もいない教室で、自分の机の上に座り、意味もなく笑った。
あちこちから聞こえる慎二の悪口。
それが異様に心地よかった。
だってさ、あんなに慎二慎二うるさかった女達が、手の平返したように慎二を罵倒するんだ。
笑っちゃうだろ?
俺は、完全に人間不振になった。
所詮は慎二の顔しか見てない女達や、今まで慎二の事を恐れてた奴等が、大和を盾にして調子に乗るんだ。
もう慎二は、誰の邪魔もしなかった。
同時に、俺は誰も信じられなくなった。
慎二が壊れたと同時に、俺も壊れた。
でも、慎二は俺の事を嫌ってない事はわかっていた。
俺は、表面上は慎二に優しくしていたからな。
馬鹿な慎二。
お前を壊したのは俺なのに。お前の人生めちゃくちゃにしたのは、心配そうに演技している、目の前の人間なのに。
な?誰も信じられなくなるだろ?
自分も。
「あっはっはっは!!!」
俺は、壊れたように笑った。
これで、俺は幸せになれた?
答えなんて考えなくてもわかる。
だって、勝手に涙が出てくるんだ。
嬉しいからじゃない。悔しいからじゃない。
「うっ……!」
悲しいからだよ。
俺は、もう誰も信じない。
人間の醜さは、俺が一番よく知っている。
本当に滑稽だ。
最初のコメントを投稿しよう!