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「………春樹」
慎二が静かに口を開いた。
春樹さんは肩を竦めたけど、すぐにまた慎二を睨んだ。
慎二、今どういう思いしてるんだろう?
何を言うつもりなんだろう……?
今の春樹さんに煽るような事を言うと、大喧嘩になりそうで怖い。
あたしは慎二をじっと見つめた。
「俺、どうしたら良かったんだよ…?」
慎二は真剣な表情で春樹さんを見た。
春樹さんは戸惑いを見せた。
あたしは、涙が出てきて、顔に手を当てて必死に堪えた。
本当に慎二はどうしたら良かったんだろう。
そんなの誰にもわからない。
でも、慎二は何も悪くない。
それだけは言える。
「明里が俺を好きで、それで俺を恨むのはわかる。でも、恨まれたって俺にはどうしようもできない。なあ、どうしたら良かったんだよ?」
「……………っ」
春樹さんは、息を呑んで黙った。
「お前の望み通りになっただろ?なんでまだ俺を潰そうとするんだよ……」
春樹さんの手が少しだけ震えていた。
春樹さんは、今どんな気持ちなんだろう……
あたしは、見ているしか出来なくて、自分の無力さに心の中で舌打ちをした。
「春樹……」
「………さい……うるさいうるさいうるさいっ!!!」
急に春樹さんは叫び、慎二から手を離し、地面に膝をついた。
「そんなの俺が聞きたいよ……どうすれば良かったんだよ……」
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