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春樹さんの弱々しい声が聞こえてくる。
慎二は黙って、悲しそうに春樹さんを見下ろした。
「ただの八つ当たりってわかってた……悔しくて悔しくて、お前を潰す事しか頭になかった……でも、後悔したんだ……だから手遅れだったけど、反省したつもりだった。
でも、久しぶりにお前を見たら、また俺の中で黒い感情が出てきて………」
涙が地面に落ちる。
春樹さんは泣きながら話した。
あたしは、春樹さんを責められなかった。
一番悪いのは明里さんじゃないのかな……
でも、誰が悪いのかなんて考えても仕方ない。
春樹さんと同じ位に、慎二は辛い思いをした。
でも……
「慎二……本当にごめん。ずっと謝りたかった。本当はあの時に言わなきゃいけなかったのに、また繰り返してごめん……」
泣きながら謝る春樹さん。
慎二はしゃがんで、春樹さんと同じ目線で話した。
「もういいんだよ。わかってくれたんならそれでいい。でも、お前が謝る相手は俺だけじゃないはずだ」
春樹さんは、あたしと春人さんを見て、静かに腰をあげた。
そして、涙を拭うとあたし達の前まで来て、頭を下げた。
「ごめん……本当にごめん……」
「春樹さ……」
急に謝られて、少し困惑した。
春人さんは複雑そうな顔をして、一瞬あたしを見る。
そして、春樹さんに頭をあげるように言った。
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