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「でも……彩香にキスしちゃったし……海原君が僕のこと嫌だろう……?」
気まずそうに春人さんが言うと、慎二はにっこり笑った。
あ、何か企んでる顔だ。
「まあ、簡単には許せねえな。今度、俺のバイト先で皆に何か奢れよ。春樹と割り勘でな。あと、彩香のこと呼び捨てにするのやめろ」
「わ、わかったよ……」
最後辺りを、黒いオーラを出しながら話す慎二に圧倒されて、春人さんは頷いた。
そう言えば、あたし春人さんに呼び捨てにされてたんだ。
気にしてなかったけど、改めてみたら何か違和感あるな……
なんて考えてたら、春人さんがあたしに話しかけた。
「森川さん、ごめんね。君の事は諦めるよ。海原君が相手じゃ勝てる気がしないからね。あと、結婚の話は無かった事にしてね」
「は…………?」
「げっ!」
春人さんが結婚って言った瞬間、慎二は眉間に皺を寄せてあたしを睨んだ。
ちょ、何余計な事言ってんのよ!!
慎二に誤解されちゃうじゃん!!
「……どういう事だよ彩香」
素晴らしいほど笑顔であたしを見てくる慎二。
ヤバい。ちょっと怒ってる。
「いや、あの大した事ないの。春人さんが勝手に「森川さんが、僕のプロポーズの返事を考えてくれていたみたいなんだけど、もう僕は、森川さんにそんな気持ちは無いから、取り消しにして欲しいって言ったんだよ。」
あたしの言葉を渡って、春人さんがまた勘違いぶりを発揮してべらべら喋る。
いや、考えてないよ。断ったじゃん!
なんでまだ勘違いしてんのよ!
「…………………」
無言で此方を睨む慎二。
もう笑ってなかった。
「……お前も俺に何か奢れ」
「ええっ!?」
あたし、被害者なのに!
でも、慎二に逆らう勇気なんて何処にも無く、あたしは渋々頷いたのだった。
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