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「そういえばね、大林風邪で休んでるの。明日には学校来るって」
「大丈夫なのかよ?」
「大丈夫らしいわ。バカは風邪ひかないって言うけど迷信だったみたいね」
呆れたようにため息をつく恵美ちゃん。
なんだかんだ言っても心配なんだろう。
元気がないように見えた。
ふと考えたのが、もしかしたら神宮寺さんも風邪で来れないのかもしれない。
メールしようと思ったけど、あたしは、神宮寺さんのメアドも携帯番号も知らない。
連絡手段がない……
そんな状況に困ったような顔をしていると、慎二が不思議そうに聞いてきた。
「お前、どうしたんだよ?」
「神宮寺さん、入学式から来てないの……まだ入学してから全然経ってないけど、ちょっと心配になっちゃって……でも携帯番号やメアド知らないんだ」
ため息をつきながら言うと、慎二が携帯を差し出してきた。
きょとんとしていると、急にいじりだし、携帯の画面をあたしに見せてきた。
そこに書いてあったのは『神宮寺鈴華』の文字だった。
「な、なんで慎二が知ってるの!?」
「俺、前に婚約がどうのこうのってあっただろ?あの時にオッサンに無理矢理アドレス帳に入れられたんだよ。消す必要もないから放置してた。使えよ」
お礼を言って受け取ると、神宮寺さんの携帯に電話をかける。
何度か呼び出し音がなって、ガチャッと言う機械音がした。
「もしもし……?」
久しぶりに聞いた声は、慎二からの電話にも関わらず弱々しかった。
やっぱり、風邪ひいてたんだ。
頭に響かないように優しく声を出した。
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