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「今頑張って実績残しとけば、きっと留学許可下りるよ」
「え………本当?」
「予想だけど。でも絶対大丈夫」
英絵が泣き止んだことを確認して、梓は掴んでいた頭を放し、よしよしと軽く撫でた。
梓はすっと立ち上がると、さっきまで座っていたピアノイスに座り直し、今度は楽譜の整理を始めた。
「今の段階でのコンクールの実績は、二年生としては十分。技術もセンスもね。
……もっと自信持ちなさい。今まで評価されてきたのは、叔父様の血でも、私の伴奏でもない。
ヴァイオリニスト宮城英絵の演奏なのよ」
「……っ!!あ~~じゅ~~さ~~!!」
梓の、滅多に聞けない誉め言葉に、英絵は嬉しさのあまり本人に飛び付いてしまった。鼻水も飛びそうな勢いである。
それを、梓は欝陶しそうに腕を突っぱねて拒否する。
「あー、はいはい。
分かったなら、頑張れるね?」
「うん…うん……!わたし頑張るうっ」
鼻水を垂らしながら、勢い良く頷く英絵。
またもや梓に欝陶しそうに避けられたが、英絵はもうそんなことは気にならなかった。
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