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しかし当の英絵は、そんなことには微塵も気付いていない。
むしろ暑さのせいで回らない頭を、言われ負けしそうな悔しさでどうにか回転させて、梓を何とかぎゃふんと言わせるような反論を考えていた。
「あっ!ヴァイオリンって、弾きすぎたら二の腕痛いんだからね!」
「そんなに言うなら練習止めてあげようか?……誰があんたのために練習付き合ってあげてるかを考えた上で、それでもまだ止めたいなら、だけど」
梓は最後まで言い終えると、僅かに口の端を上げて笑った。
練習はもう止めるつもりではあるが、手伝ってやってるのに何も見返りが無いのでは堪らない。少しぐらい遊んだって罰は当たらないはずだ。
考えだすと楽しくて堪らなくなり、梓は思わずクスクス笑いだしてしまった。
(…こっ、この鬼め……!)
梓の姿を見て思ったとしても言えるはずもなく、英絵は遂に諦めて、ふいっと梓から顔を逸らしてしまった。
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