誰がいちばん好きか、なんて。

はじまりのはじまり

だが、長期休暇中の自主練習についてはまだ諦めきれないらしい。寮に残っている二年生が英絵だけ、というのも引っ掛かっているらしい。
つまり、自分だけという状況に、英絵はどうも納得がいかないのだ。
ちなみに梓は入寮しておらず、自宅から学校に通っている。

「大体、何でゴールデンウィークにまで練習しなきゃいけないの！？」

そうだ。
国民の休日に、どうして国民が休んじゃだめなの！？

そう自分の中で自己完結し、納得する英絵。どうやら英絵は、一度こうだと考えると意見を曲げられない性格らしい。
そう。
俗に言う単純である。

「またその話ですか……」

先の英絵の疑問は、この長期休暇が始まって以来、英絵が毎日口にしている疑問だった。
英絵は単純であるが故に、納得できない問題には絶対に首を縦に振らない。

（なんかもう、相手するのめんどくさいわ………）

英絵が気にするように、梓は左手で頭を抱えながらわざと大きなため息を吐いてみせる。

梓のため息に、梓の狙い通り狼狽える英絵だが、一度生まれた考えをやはり曲げることはできず、更に興奮した様子で梓につっかかった。
何せほら、単純だから。