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梓に見られて自信が無くなったのか、梓に向けられていた目線が段々下へと降りていき、終には地面に落としてしまった。
「だから…………だから、不安、だよ……。アズが伴奏、弾かないなんて……」
言いながら少し泣きそうになってしまって、まなじりに溜まった涙を押し返そうと、必死に瞬きを繰り返す。
「……………え、そんなこと?」
「そんなこと、じゃないよう!私にとってはすっごく大切なんだからあっ」
梓の言い様に悲しくなって、半ば叫びながら目線を上げた。
その拍子に涙が流れだして、顔面が大洪水になってしまった。
梓はと言えば、別に適当に英絵の話を聞いていたわけではなかった。
なぜ英絵が今日一日集中力がなかったのか、という疑問が解消したと同時に、その原因が自分であったことに少し驚いていたのだ。
扇子を動かす手を止めて、梓は英絵を見る。
本物の滝も真っ青な、大粒の涙を流して、顔面がぐしゃぐしゃになっている。
その汚さが、なぜか凄く愛しかった。
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