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 加えるに、僕は帰宅部、こいつはバスケ部で、同じ中学校出身ですらなく、つまりはクラスが一緒という部分を除いて共通項も接点もない奴なのだ。  なのにこいつは、僕に、本当によく声をかけてくる。  その理由を僕はまだ知らない。 「・・・・・・委員長、さようなら」  僕はそう吐き捨て、こいつ、もとい委員長の脇を摺り抜けて早足で廊下を突っ切る。 「ま、ま、待てってちょっと~!」  そんな僕を、委員長はしつこく追い掛けて来る。  委員長は退かず、僕も過度に払いのけたりせず。  結局、委員長の言うように、一緒に帰る構図になった。 ▼  ジャリ、ジャリ、と音を立てながら、僕と委員長は砂利だらけのアスファルトの上を並んで歩いていた。  やれ、バスケ部の誰が下手なのに威張ってて、とか、バスケ部のアイツのディフェンスは躱せる気がしないだとか、クラスのあの子は可愛いけど性格がきついとか、とてもどうでもいいことを委員長がペチャクチャ喋り、僕は聞き流していた。  ・・・いつもこうだ。  委員長にだって普通で、まっとうで、そしてちゃんと高校生している友達が何人もいるのに、隙さえあれば、今みたいに僕に向かって話し掛けて来るのだ。  それは4月からずっと続いている。  正直、気味が悪い。  最初の方は僕も少ない愛想を振り撒いて対応していたけれど、ゴールデンウィークを迎える前に限界が来た。  今ではもう、全くまともな応対はしていない。  それなのに委員長の口は止まない。  僕が何の反応も示してないのに、延々と話題を切らさずに話し続ける。  ・・・ある種、才能だな、羨ましくないけど。  僕はそう思い、溜息をついた。  それとちょうど重なる形で、 「そういや倉森、お前のこと、この前の日曜日に商店街で見たんだけど・・・・・・」  聞き捨てならない言葉を、委員長の口から聞いた。
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