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かはっ、かはっ、と委員長は腹を抑えて苦しそうな呼吸をした後、目玉をギョロリと回転させて、僕を見上げた。
「わぁった、わぁったよ。呼ばねえさ、ああ呼ばない。これ以上の蹴りは勘弁だよ。・・・ったく。で、何で呼んだらいけねーのか、教えてくれよ」
至極当然な問い掛けと共に、委員長は砂を払いながら立ち上がる。蹴りは大して効いていないらしい。
再び僕と委員長の上下が逆転して、僕は顔を上げざるを得なくなった。
「・・・何故かは、僕も■ちゃんから聞いたことはないよ。ただ、特定の人以外に■ちゃんと呼ばれると酷い癇癪を起こすんだ。だから、駄目」
「酷い癇癪って何だよ」
「・・・・・・委員長」
「ん?」
「人間の肋骨の間って、結構指突っ込みやすいらしいよ」
「へ? どゆこと?」
「■ちゃんがこの前熱弁してくれたことさ」
「・・・・・・ああ、うん、そうか。悪かった。何か、ごめん」
「・・・・・・いや、分かってくれたらいいんだけど」
どこか軽そうな雰囲気漂う委員長だけど、やっぱり県上位の進学校に来るだけあって、洞察が早く、とても助かる。
「・・・で、だ。倉森よ」
「何?」
これ以上、何か聞くことがあるのだろうかと、僕は内心首を傾げる。
「いや、結局その子はお前の彼女なわけ?」
――――無論、首を傾げたなんて嘘である。この質問は、来るだろうなと予期していた。
「・・・違うと言って、委員長は信じる?」
「信じるわけねーだろ」
僕と違って、とても委員長は正直だ。僕は、そんな生き方に憧れている。密かに。
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