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 ぶんぶんと頭を振って拒絶する僕を見て、委員長は苦笑しながら自分の手を僕の頭から離した。  僕に蹴っ飛ばされても大して怒らなかった委員長に対する自分の器の小ささに、若干辟易しつつも・・・もちろん、それは虚実なのだけれど、とにかく、僕は委員長に説得を試みた。 「委員長、例え話をしていい?」 「ああ、いいけど?」  助かる、と僕は呟きながら小石を一つ蹴っ飛ばして歩きはじめる。 「上手く例えられているかは自信が無いんだけどね」  自信を持って何かをするなんて大それたこと、物心が着いた頃からほとんどしたことはないのだけれど。 「山奥を・・・旅人が歩いている。旅人は長い間水を飲んでいなくて、渇きでいつ死んでもおかしくない。だけれど、幸運に・・・本当に幸運なことに、澄んだ湧き水を山の中で見つけて、命を取り留めた。 ――――少年が夏の陽の下の草原で佇んでいる。陽はとても強くて、少年は軽い眩暈に襲われていた。しかし偶然大木を見つけて、その木陰で涼むことが出来た」  僕は肩に若干かかった髪の先をちりちりと弄った。 「さて、委員長。この場合、旅人は湧き水に、少年は大木に――― ―――恋することは出来る? 愛を注ぐことは出来る?」  ・・・修辞疑問文。  結論は既に出ている。  でも、委員長は苦笑して言った。 「それって、何かこじつけ臭いな」  そう言ってしまう心持ちも、分からないではない。 「でも、事実だ。僕と■ちゃんにとってはね」  入道雲の狭間から直射する陽に目を細める。  蝉が翅を擦る音が頭蓋骨に響いて、少し気持ち悪かった。  ・・・そして僕と委員長の足は、委員長の家の前に辿り着いていた。  僕の家は、ここよりさらに向こうにある。
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