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  ▼  入ってきたときとほとんど変わらぬ鈴の響きを聞きながら、食事を終えた僕と■ちゃんはピアノソナタを出た。  二人分の食事の費用と、それと競る値段のグランドピアノケーキのせいで、僕の財布の中身から紙切れが消滅した。・・・次のお小遣い支給は一週間後なのに、である。  燻されているような最低の気候条件も相まって、僕の肉体と精神はズタズタボロボロだった。  そんな僕の状態などどこ吹く風と、前を歩いている■ちゃんは楽しそうに鼻歌なんか歌っちゃったりしていた。 「●先輩~次はどこに行くんですよ?」 「だめでござる。今日はもう断食でござる」 「聞こえない振りー」  耳を塞いで僕の周りを旋回しはじめる■ちゃん。  ぐるぐると七回くらい回った後、突然僕に横から抱き着いて耳元に口を寄せた。 「あそこに見えてるアイスクリーム屋さんの、バニラソフト買ってくれたら・・・・・・特別に、胸揉ませてあげちゃいますですよ?」  そう言って■ちゃんが指差した先には確かに、陽気そうなニイちゃんが店員をしているアイスクリーム屋が佇んでいた。  ソフトクリーム、1つ100円。  ・・・たかが100円、されど100円である。 野口さんすら愛想を尽かした僕の財布からすれば、大打撃に違いない。  そんなソフトクリームを、無いに等しい胸を差し出せば奢ってもらえると思うだなんて、虫が良すぎるぞ■ちゃん。 「あ、●先輩ちょっと待ってください!! アイスクリーム屋さんに向かってくれるのは嬉しいですが走るの速過ぎるですよ~~っっ!!」  ・・・冷静な頭脳と打って変わって、僕の体は節操がなかった。
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