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 数分後、僕と■ちゃんはアイスクリーム屋が店の前に設置しているベンチに並んで座っていた。  もちろん、■ちゃんの手には例のバニラソフトが握られている。  目を細めながら、白いバベルの塔を嘗め崩していく■ちゃんを眺めながら、僕は途方に暮れていた。  もっとも、こういうときでも無い限り滅多にお金は使わないから、財政的な危機に瀕しているというわけではない。  ないけれど、自分の100円が嘗め尽くされていくのを黙視していられるほど、僕は世捨て人じゃなくて。 「ふん、黙って見てたら美味そうに食べやがって、見てろよ!」  隣から身を乗り出して、■ちゃんとソフトクリームを挟んで見合う恰好になりながら、僕はバベルの塔攻略戦に参加することにした。  ■ちゃんは「!?」と目を白黒させたが、僕が抜目なく■ちゃんの肩と、バニラソフトを持った手を掴んでいたから逃げることはできなかった。  お互い、パクリと噛みつくような無粋なことはせず、いつかテレビで見た、ポッキー1本を両端から二人で食い進めていくシーンさながらに、塔を細めていく。  実に普通のバニラソフトで、ただただ甘ったるいものでしかないのに、僕にはとても耽美的な味に思えた。多分気のせい。  当たり前だけど、ソフトクリームは二人で食べることを想定した食べ物じゃないため、あっという間にクリームは尽きて、 「・・・・・・」 「・・・・・・」  僕らは縦にしたリップクリームの容器も挟み込めないくらいの至近距離で、見つめ合っていた。
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